2026年06月25日
35 太陽光発電は次のステージへ!「タンデム型太陽電池」が切り拓く未来
近年、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの導入が世界中で進んでいます。その中心的な存在となっているのが太陽光発電です。
しかし、現在主流のシリコン太陽電池にも課題があります。それは、太陽の光をすべて効率よく電気に変えられるわけではないということです。
そこで今、世界中の研究機関や企業が開発競争を繰り広げているのが「タンデム型太陽電池」です。
発電効率を飛躍的に高める可能性を持つこの次世代技術は、私たちの暮らしやエネルギーの未来を大きく変えるかもしれません。
「タンデム型太陽電池」とは?

「タンデム(Tandem)」とは、もともと「二人乗り自転車」や「二頭立ての馬車」を意味する言葉です。
タンデム型太陽電池は、その名の通り異なる種類の太陽電池を重ね合わせて発電する仕組みです。
太陽光にはさまざまな波長が含まれていますが、一つの材料だけでは取り込める光に限界があります。
例えば現在主流のシリコン太陽電池では、一部の光は十分に利用できず、熱として失われてしまいます。
そこで、
- 上の層で短波長の光を吸収
- 下の層で長波長の光を吸収
というように役割分担を行うことで、これまで取りこぼしていた光まで有効活用できるようになります。
まさに「得意分野の異なる選手がチームを組む」ことで、より高い成果を生み出す技術なのです。
発電効率はどこまで向上するのか
現在普及しているシリコン太陽電池の発電効率は、おおむね20%前後です。
一方でタンデム型太陽電池では、30%を超える変換効率が期待されています。
もし発電効率が20%から30%へ向上すれば、
同じ設置面積でも約1.5倍の発電量
を得られる可能性があります。
限られた屋根や土地を有効活用できることから、今後の再生可能エネルギー普及において大きな意味を持っています。
注目される2つの技術
現在開発が進むタンデム型太陽電池には、大きく分けて2つの有力な方式があります。
① Ⅲ-V族化合物半導体系タンデム
非常に高い発電効率と耐久性を誇り、すでに人工衛星や宇宙探査機などで活用されています。
一方で、
- 希少金属を使用する
- 製造工程が複雑
といった理由からコストが高く、一般用途への普及には課題が残っています。
② ペロブスカイト系タンデム

近年最も注目を集めているのがペロブスカイト太陽電池との組み合わせです。
ペロブスカイト太陽電池には、
- 軽量
- 薄型
- 曲げられる
- 低コスト製造が可能
という大きな特徴があります。
そのため、シリコン太陽電池との組み合わせによって高効率化と低コスト化の両立が期待されています。
一方で、長期間の耐久性向上が実用化に向けた重要な課題となっています。
EVや建物が発電する未来
タンデム型太陽電池の可能性は、単なる発電効率向上にとどまりません。
例えば、
- 電気自動車(EV)のルーフ
- 建物の壁面
- 曲面を持つ屋根
- 災害時の仮設設備
など、従来の太陽電池では難しかった場所への設置が期待されています。
特に変換効率35%を超えるレベルまで進化すれば、EVが日常的な移動の一部を太陽光だけで賄える可能性もあると言われています。
すでに始まっている実証実験
こうした未来に向けて、国内でも社会実装に向けた取り組みが進んでいます。
その一例が、さいたま市と株式会社カネカによる実証事業です。[1]
さいたま市役所本庁舎では、国内初となる公共施設へのタンデム型ペロブスカイト太陽電池を活用した独立電源システムが設置されました。
この実証では、
- 発電性能
- 耐久性
- 非常用電源としての活用
- 遠隔監視システム
などを検証し、将来的な社会実装につなげることが期待されています。
未来のエネルギーを支える新技術

太陽光発電は今、「より多く発電する」だけでなく、「より柔軟に活用する」時代へと進化しています。
高効率化と軽量化を同時に実現できるタンデム型太陽電池は、その中心的な技術となるかもしれません。
研究機関による技術開発と、自治体や企業による実証事業が着実に進む中、私たちの身近な場所で次世代太陽電池を見かける日もそう遠くないでしょう。
太陽の光をこれまで以上に効率よく利用する「タンデム型太陽電池」。
その進化が、日本のエネルギーの未来を大きく変えていくことに期待したいですね。